右心機能

解剖

・右室:自由壁と中隔から構成される非対称な三日月形をしている
Moderator bandはほとんどの健常人に存在し、下壁中隔から右室前壁まで伸びている
・右房:上大静脈が右房上壁の右前方部から、下大静脈が下壁の右後方部から入る
三尖弁輪が右房の下方部分を形成し、冠静脈洞がこの構造の直上で右房に開放する
・三尖弁:前尖、後尖、中隔尖の三尖であり、同様に3つの乳頭筋がある
三尖弁輪は僧帽弁に比べて心尖部に位置する(心内膜欠損症ではみられない)
・肺動脈弁:前尖、左尖、右尖と呼ばれる三弁尖からなり、直接右室の筋肉組織に付着している
   経食道よりも経胸壁のほうが評価に適している

右心系の描出

ME four-chamber

右室の心尖部、中部、基部を評価することができる
三尖弁はこの像では中隔尖と前尖であり、プローブを深くすると中隔尖と後尖を確認できる(さらに深くすると冠静脈洞がみえる)

ME RV inflow-outflow

三尖弁口の面が超音波ビームにほぼ平行になるため、三尖弁血流速度を測定するのに最適であり、右房評価にも使用できる
肺動脈弁は大動脈弁の右冠尖、左冠尖の交連部に接しており、大動脈弁とほぼ直交している

ME bicaval

右房自由壁、心房中隔の評価に有用  

TG short axis、TG RV inflow

右室自由壁や心室中隔の評価、三尖弁が確認できる
TG RV inflowは右室の長軸像であり、三尖弁を支える検索や右室乳頭筋を観察するのに優れている

右室機能評価

肥厚

右室壁の厚さが5mmを超えると右室肥大が存在しており、肺動脈圧上昇や肺動脈弁狭窄があることを示唆している

拡張

右室拡張は容量負荷や慢性の圧負荷があるときにみられる
拡張するにつれ右室の形状は三角形から円形となり、右室が心尖部の一部を形作る
正常では拡張終期の右室断面積は左室のおよそ60%であり、中等度の拡張で右室と左室の断面積は等しくなる

・容量負荷
右室が拡張して心筋重量が増加し左室重量を超えると中隔の奇異性運動が現れる
右室の拡張期過剰充満がピークとなる拡張終期に中隔のひずみが最大となり、収縮期には奇異性に右室に突出する

・圧負荷
まず右室自由壁の肥厚として認められ、慢性的に続くと中隔の肥厚が現れる
右室の収縮期後負荷が最大となる収縮終期と拡張早期に中隔の偏移が最大となる

収縮能と三尖弁輪の収縮期移動

右室の血液駆出は主として右室自由壁の内方運動によるものであり、流出路、心基部の下方運動の寄与は少ない
三尖弁輪の収縮期の長軸方向偏移は右室収縮能の指標と用いられ、正常では心尖部方向に20 ~ 25 mm偏移する

肝静脈血流パターン

S波:心房弛緩による心房圧の低下と右室収縮時の三尖弁の心尖部の偏位による右房に向かう順行性血流
D波:早期心室充満期の右房圧低下により起こる拡張期の順行性血流
A波:拡張末期の心房収縮による逆行性血流
V波:収縮終期に起こる逆行性血流

三尖弁

三尖弁逆流

・病因と機序
右室拡大による三尖弁輪拡大や肺高血圧症によるものが多く、その他心内膜炎、カルチノイド症候群、エプスタイン奇形でみられる

・重症三尖弁逆流の定義
vena constracta幅 > 7mm
ジェット面積/右房面積 > 50%
肝静脈血流波形で収縮期の異常な逆行性血流を認める

三尖弁狭窄

・病因と機序
リウマチ性病変が最も多い

・重症度評価
ドプラ法:三尖弁流速 > 1.5 m/sで有意な狭窄があると考えられる(通常の三尖弁流速は0.7m/s以下)
重症三尖弁狭窄:弁口面積 < 1cm2

肺動脈弁

肺動脈弁逆流

・病因と機序
先天性逆流は弁尖の数の異常や形成異常が原因となり、後天性の原因としては肺高血圧症や二次性の弁輪拡大、ゆがみが原因になることが多い

・重症度評価
重症肺動脈弁逆流:RVOT内にジェットが充満する

肺動脈弁狭窄

・病因
先天性、リウマチ性疾患、カルチノイド、感染性心内膜炎から起こることもある

・重症度評価
重症肺動脈弁狭窄:ジェット速度 > 4m/s

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