アーチファクトとピットフォール

心内異型構造物

分界稜(crista terminalis)

右房と上大静脈の境界から始まる筋肉の隆起で、下大静脈まで縦に走る

ユースタキ弁(eustachian valve)とキアリネットワーク(Chiari network)

下大静脈と右心房の境界から発する線維状、膜状の構造物で、ユースタキ弁は先端がどこにも付着しておらず、キアリネットワークは先端が右心房や心房中隔に付着する

心房中隔の脂肪性肥大(lipomatous hypertrophy)

脂肪浸潤が心筋にのみ起こり卵円窩には起こらないため、薄い卵円孔を中心としたダンベル型の脂肪性肥大が認められる

クマジン稜(coumadin ridge)

左心耳と左上肺静脈の心房への流入口の間に発生する著しい筋肉の隆起
一般に近位が細く、遠位側が厚くなり球状の外見を示す

左心耳の櫛状筋

正常左心耳には線状の櫛状筋の隆起が並んでおり、左心耳を伸展させている

心膜洞(pericardial sinuses)

心房と大血管の間にある心膜洞は、ほんの少しの心膜液しかない場合にもエコーフリースペースを形成することがある

Lambl excrescence

高齢者の大動脈弁から出ている細い線維状のひも
感染性心内膜炎の疣贅や腫瘍との鑑別が問題となる
僧帽弁に認めることもある

Moderator band

右室を二分するような筋性組織により、厚みのあるエコーとして認識される


断層法のアーチファクト

不十分な画像な質

超音波設定、患者の解剖、消化管内の空気、検査者の技術により画像の質が変化する

音響陰影(acoustic shadowing)

石灰化した大動脈弁、僧帽弁など、高い音響インピーダンスをもつ構造物に超音波が当たると、音響陰影が発生する
音響陰影の結果、強いエコー輝度をもつ構造物より先にはエコーが届かなくなる

方位分解能(lateral resolution)が低いことによるゆがみ

断層像は個別のビームを集めることにより形成しており、2本のビームの間にある構造物は両隣のビームから得た情報を平均して画像に映し出す
2本以上のビームにまたがる構造物の大きさの測定の正確さ(方位分解能)は、1本のビームの中での測定(距離分解能)と比べて劣っており、また超音波ビームは遠方部で個々のビーム間の距離が大きくなるため、分解能の違いによって形態のゆがみが生じる

サイドローブ(side lobe)とビーム幅(beam width)

メインの超音波ビームの道筋外への弱いビームの漏れが、石灰化した動脈、僧帽弁リング、人工物、カテーテルなどの高い音響インピーダンスをもつ構造物に当たると、その漏れた超音波の反射が検出される

多重反射(reverberation)

二つの強い反射物によって超音波が何度もはね返されることにより、2種類のアーチファクトが生じる
      一つ目は反射体から遠いところにできる多数の線状影であり、二つ目は反射体からの強いエコーがプローブに再度反射して構造物に戻ることで、本来の場所の像とプローブから2倍の距離のところに像ができる


スペクトルドプラ法とカラードプラ法のアーチファクト

エイリアシング(折り返し現象)

パルスドプラでは血流速度の最大値がパルス繰り返し周波数により限定されてしまい、パルス折り返し周波数の半分、すなわちナイキスト限界(Nyquist limit)を超えるドプラ周波数の変化により、スペクトル信号はゆがんだ形になる

平行でないビーム角

超音波ビームと血流の方向で作られる角度があると、ドプラ周波数変化が正確に測定できず血流速度を実際よりも低く見積もってしまうことがある

Mirroring(ミラー効果)

実際の血流と全く同じ波形で方向が反対の表示が現れることをミラー効果という
超音波装置でプローブに返ってくる信号からドプラ周波数変化だけを分ける復調のプロセスで、ゲインが強すぎると全体の信号とは異なる位相の弱い信号が消えずに実際の血流信号の虚像として現れる

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