僧房弁疾患(2)
僧房弁狭窄症
病因
リウマチ性心疾患、左房粘液腫、高度の僧房弁輪石灰化などがあるが、最も一般的な原因は現在もリウマチ性心疾患である
- リウマチ性心疾患の心エコー所見
- ・弁葉可動域の減少
・僧房弁前尖の拡張期ドーミング
- Wilkinsのエコースコア
重症度 | 弁の可動性 | 弁下組織変化 | 弁の肥厚 | 石灰化 |
---|---|---|---|---|
1 | わずかな制限 | わずかな肥厚 | ほぼ正常(4−5mm) | わずかに輝度亢進 |
2 | 弁尖の可動性不良 | 腱索の近位2/3まで肥厚 | 弁の辺縁部が肥厚(5−8mm) | 弁辺縁の輝度亢進 |
3 | 弁基部のみ可動性あり | 腱索の遠位1/3以上肥厚 | 弁全体が肥厚(5−8mm) | 弁中央部まで輝度亢進 |
4 | ほとんど可動性なし | 全腱索が肥厚し乳頭筋まで及ぶ | 乳頭筋まで及ぶ肥厚 | 弁膜の大部分で輝度亢進 |
Wilkinsスコアの合計点が8点以下であればPTMCのよい適応である
重症度評価
- 圧較差評価
- 弁口面積評価
- プラニメトリー法
- 圧半減時間法(PTH)による測定
- 減速時間(deceleration time)による測定
- 連続の式による測定
軽度 | 中等症 | 重症 | |
---|---|---|---|
平均圧格差(mmHg) | < 6 | 6 ~ 10 | > 10 |
圧半減時間(ms) | < 100 | > 300 | |
弁口面積(cm2) | > 1.6 | 1.5 ~ 1.0 | < 1.0 |
僧房弁血流速度Vmax(m/sec)を測定し、ベルヌーイの式から圧較差を測定する
圧較差(mmHg)= 4 x Vmax2
TG basal short-axisで面積を直接測定する
[欠点]
ゲインの設定が低いと弁口面積を過小評価、設定が高いと弁口面積を過大評価してしまう
正しい短軸像が描出できないことがある
圧半減時間: 房室間圧較差が最大値の1/2になるまでの時間(→ 速度は1/√2)
弁口面積(cm2) = 220 / 圧半減時間(ms)
減速時間: 最大流速(a)と流入血流速度が基線に到達する点(b)までの時間間隔
弁口面積(cm2) = 760 / 減速速度(ms)
パルスドプラを用いて僧房弁と左室流出路で速度測定し、TVIを求める
MVA = AreaLVOT x TVILVOT / TVI MV
僧房弁形成術の術後評価
残存僧房弁逆流
1-2度MRがあると遠隔期再手術のリスクが増加し、2度以上のMRでは死亡率・合併症発症率が上昇
→ 術後MRが高度のときは再手術を検討
形成術後の弁を評価するためには適切な容量負荷、血行動態で行う必要がある
僧房弁狭窄
連続波ドプラで計測し、平均圧較差 > 6mmHg、または最大圧較差 > 16mmHgで診断
連続の式、PISAでも計測可能
僧房弁形成術後は左房・左室コンプライアンスが変化するため、圧半減時間法は診断に適さない
収縮期前方運動(SAM)と左室流出路狭窄
- 収縮期前方運動(SAM)の心エコー所見
- (1) 僧房弁前尖の収縮期の折れ曲がり (2) LVOTの乱流 (3) 後方へ向かうMRジェット
[発症リスク]
(1) 前尖(AL)の長さ / 後尖(PL)の長さ < 1.0
(2) 接合点と中隔の距離(C-sept) < 2.5 cm
(3) 左室内径が小さいこと
(弁修復後に前尖が長いこと)
[治療法]
血管内容量負荷・α刺激薬・β遮断薬投与・強心薬の減量
持続する場合には再形成・弁置換を検討
冠動脈損傷
僧房弁輪から左冠動脈回旋枝までの距離が短いため損傷する危険がある
→ 側壁・後下壁領域の局所壁運動異常がないか確認