心臓腫瘍と塞栓源

心臓腫瘍

粘液腫(myxoma)

成人に最も多く、原発性心臓新生物の30%を占める
普通は左房から発生するが右房や心室から発することもある
表面は滑らかで、卵円窩に付着することが多い
腫瘍による僧帽弁閉塞や全身塞栓を起こす

脂肪腫(lipoma)

成人で二番目に多く、心臓の良性新生物の10%を占める
通常、心室心筋から発生し、心房心筋から発生することは少ない
無茎で、エコー輝度が高く、表面は滑らかであり(左図)、大きくなって血流の閉塞を起こすことがある
脂肪腫様過形成は、卵円窩を残した心房中隔のダンベル型の肥厚という特徴的所見がある

乳頭筋線維弾性腫(papillary fibroelastoma)

成人で三番目に多い原発性心臓腫瘍である
小さく可動性のある腫瘍で、通常弁尖から起こり、他の心内膜から発生することもある
大動脈弁は最も多い発生部位で、その次は僧帽弁である
小さい(0.5~2cm)有茎性で、可動性のある線維状の突起を複数伴い、その突起は弁尖に付着する
腫瘍断片、血栓による塞栓症を発症する

横紋筋腫(rhabdmyoma)

小児で最も多い腫瘍で、ほとんど全例が結節性硬化症を合併する
通常心室から発生し、多発性のこともある
腫瘍による流出路閉塞を起こすとがある
自然消失することがある

線維腫(fibroma)

小児で最も多い腫瘍で、ほとんど全例が結節性硬化症を合併する
通常心室から発生し、多発性のこともある
腫瘍による流出路閉塞を起こすとがある
自然消失することがある

心臓肉腫(cardiac sarcoma)

心室心筋から発生し、周囲の構造に浸潤して、可動性部分と付着した血栓を伴う
豊富な血管により超音波コントラストが増強される

腫瘍の比較

           
    エコー像頻発部位その他
    粘液腫可動性のある大きな腫瘍。有茎性左房、右房腫瘍による僧帽弁閉塞や全身塞栓を起こす
    乳頭筋線維弾性腫可動性のある線維状の突起を複数伴う有茎性腫瘍弁の構造物や乳頭筋に付着腫瘍断片、血栓による塞栓症を発症する
    脂肪腫大きく滑らかな表面で無茎性腫瘍通常心室心筋にできるエコー輝度が高い
    血栓血流のうっ滞左心耳や運動異常のある心筋壁にできやすいどんな大きさのこともありうる

塞栓を起こす疾患

左心耳内の血栓

左心耳:左上肺静脈の流入部の前面で左房の上面からできる
中には櫛状筋が並び、多くの場合2以上の葉からできる
パルスドプラ:左心耳内血流速度 < 40cm/sは血栓塞栓のリスク

左室内血栓

局所壁運動異常と関連しており、ほとんどは心尖にある

心内膜炎

疣贅の大きさ > 10mm、可動性ありが塞栓のリスク因子

卵円孔開存

卵円孔開存は成人の20-30%に認められ、ME bicabal viewで心房中隔のカラードプラ、撹拌生理食塩水のコントラストを静脈注射することで開存を確認できる
卵円孔開存があると右房圧が上昇したときに奇異性塞栓を起こす原因となる

肺動脈塞栓症

肺動脈塞栓が主肺動脈や右肺動脈に存在する場合には描出することができるが、左肺動脈に存在する場合にはうまく描出することができない

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