超音波の原理

音の理学的特徴

理学的特徴

  1. 振幅
  2. 音波の振幅はその最大音圧で示され音の強さとして認識される
    音圧の程度は広範囲にばらつくので音波の振幅は2つの音波の振幅を対数スケールで比較するデシベル(dB)を使用する

    デシベル(dB)= 10 log10 I/Ir = 10 log10 A2/Ar2 = 20 log10 A/Ar
    A:対象とする組織の音の振幅、Ar:基準対照となる音の振幅、I:音の強度、Ir:基準対照となる強度

  3. 伝搬速度
  4. 周波数(f)(単位Hz):1秒あたりの音波のサイクル数、臨床的には2 ~ 10MHzの周波数を用いる
    波長(λ):音波一つあたりの長さ
    速度(m/s):組織内での音速はおよそ1540 m/sである

    v = λ x f
    λ = (1540 m/s) / f

組織との相互作用

  1. 反射(reflection)
  2. 超音波は均一の組織を伝搬して異なる音響特性をもつ別の組織に到達すると、一部はその組織の境界面でプローブへ向かって反射し、残りはその組織を透過する

    ・正反射と散乱反射
    正反射 ・・・ 超音波が平坦な表面を持った物体に当たった際に生じ、超音波ビームは境界面に向かう入射角と同じ角度で反射が生じる
    散乱反射 ・・・ 超音波が小さくて不整形の表面(赤血球など)に当たった際に生じ、あらゆる方向にビームが散乱して正反射よりもはるかに弱いエネルギーが反射してプローブに戻ってくる

  3. 屈折(refraction)
  4. 超音波ビームのうち反射せずに組織を透過したビームの方向は、物質間の音響インピーダンスが異なる場合屈折して進行する

    入射角が90°のときや音響インピーダンスが最小のときには屈折は起こらないため、エコービームを関心領域に直行にすることで屈折によるアーチファクトを最小限に抑えることができる

  5. 減衰(attenuation)
  6. 超音波信号が組織を通過することで散乱と吸収により送信強度の損失(減衰)が起こる

    散乱(dispersion) ・・・ 細胞構造が不整であるため、散乱により超音波ビームは拡散する
    吸収(absorption) ・・・ 心臓の中で摩擦力が超音波エネルギーを熱に変化させることで起こる。信号の周波数が高く伝搬の距離が大きいほど吸収は大きい。減衰係数(dB/cm/MHz):組織により異なる

超音波ビームの特徴

三次元超音波ビーム

  1. 近距離(near field)と遠距離音場(far field)
  2. 超音波ビームは近距離音場と遠距離音場の二つの領域からなり、超音波エネルギーは近距離音場の領域内に集中するため強いエコーとなり良い画像が得られる
    近距離音場の長さはプローブ面の直径(D)に比例し、波長に反比例する
    Ln = D2 / 4λ
    近距離場の先では超音波ビームは発散し、遠距離音場を形成する

  3. 集束(focusing)
  4. 集束は超音波ビームを狭くすることでこの部分の画像を良くするが、その先では広く発散してしまうため遠距離音場の画像が劣化してしまうという欠点がある

  5. フェーズドアレイ(phased array)
  6. 平行に並んだ電子素子の荷電する順番を変更することで電子的にビームを集束し、画像の質を上昇させることができる

分解能

  1. 距離分解能(axial resolution)
  2. 超音波ビームの伝搬方向である2点を識別する能力であり、超音波パルスの周波数帯域によって分解能は決定される
    広い周波数帯域をもつパルス波は、高周波で短い信号という特徴を持ち距離分解能が優れる。逆に狭い周波数帯域をもつパルス波は、低周波で長い信号であり距離分解能は劣る
    しかし、高周波の音波は減衰しやすいため深部のエコー像は劣化するという特徴がある

    距離分解能(△x) = n x λ /2
    n: 波数 λ:周波数

  3. 方位分解能(lateral resolution)
  4. 水平面に並んだ物体において超音波ビームに直交する物体を識別する能力であり、ビーム幅が方位分解能の決定因子である
    ビーム幅は振動子の直径に比例し、距離に反比例する

    方位分解能(△y)= d/2 ≒ 1.22λ/D×X
    d=ビーム幅 D=振動子の直径 λ=波長 X=距離

  5. スライス方向分解能(elevational resolution)
  6. 超音波ビームに直交する垂直方向の物体を識別する能力であり、(スライス画像はビームの厚さから集めた情報を平均化して表示するため)ビームの厚さが薄いほうがよいスライス方向分解能を得る

超音波の表示

断層法表示方式

  1. Aモード(amplitudeモード)
  2. 物質までの距離を横軸にとり、反射したエコー信号の振幅を縦軸にグラフ上に表示する方法

  3. Bモード(brightnessモード)
  4. 反射エコー信号を点の明るさ(輝点)として表示する
    複数本の超音波ビームを使用することで2次元画像が描出できる

  5. Mモード(motionモード)
  6. 断面上のさらにある一直線上に注目し集めた一連のBモードの情報を表示することで、Bモードに時間的な情報を付加する

ドプラ法

  1. 連続波ドプラ法
  2. 送信用振動子と受信用振動子を分けることによって連続的に超音波を送受信でき、きわめて高速度の血流を正確に測定することができる(理論上、音速の1/2までの測定が可能、ASなどの速度測定に有用)
    パルスドプラが対象部分からの記録を得るのに対し、連続波ドプラはビーム経路に沿った全ての血流を検出する

  3. パルスドプラ法
  4. 送信と受信用の振動子は単一であり、送信した音波が戻ってきた後に次の音波を送信する
    パルス波を用いて送信と受信を交互に行なうため、任意の部位だけのドプラ情報が得られる

    送信パルスと送信パルスの間隔をパルス繰り返し周波数(PRF)といい、周波数偏移の解析がこの繰り返し周波数に依存してしまうため、周波数検出に限界がある
    パルスドプラで検出可能なドプラ周波数偏移(ナイキスト限界)を超えた場合、逆流方向に折りかえって流速波形が表示され、これを「折り返し現象(エイリアシング)」という

  5. カラードプラ法
  6. 超音波断層法とパルスドプラ法の技術を結合させることで得られる
    振動子に向かう運動を赤色、振動子から遠ざかる運動を青色で表示する
    パルスドプラ法を応用しているため、折り返し現象によるアーチファクトを受ける

inserted by FC2 system inserted by FC2 system