僧房弁疾患(1)

解剖

・前尖・後尖からなり両弁葉は前外側交連と後内側交連であわさる
・僧房弁前尖は大動脈無冠尖と連続する
・前外側交連の下には前外側乳頭筋、後内側交連の下には後内側乳頭筋がある
・乳頭筋からは両弁葉に腱索を出しており、一次腱索は弁葉先端、二次腱索は弁腹、三次腱索は弁基部に付着する


僧房弁の描出

ME four-chamber

・大動脈弁に近い内側が前尖、外側が後尖 ・プローブを前屈(または引き抜く)して見えるfive-chamberは、弁の前方(A1/P1(P2))を表示
・プローブを後屈(または挿入)して見えるfour-chamberは、弁の後方(A2(A3)/P2)を表示
・エコービームは弁を斜めにきるため、概略を見るのには適するが弁の病変部は正確にわからない

ME mitral commissural

・両交連を結んだ面に平行で、前外側・後内側乳頭筋が描出されるところで、P1/A2/P3となる
 ・プローブを左側にふることでP1/P2/P3、右側にふることでA1/A2/A3を描出できる
 ・異常範囲の決定
 

ME two-chamber

・後内側乳頭筋と前尖の大部分を通る
・プローブを左側にふることでP1/P2/P3、右側にふることでA2/A3/P3を描出できる
・左心耳内を確認するのに有用

ME long axis

・両交連を結んだ面に垂直で弁葉の中央を通り、確実なA2/P2の描出が可能である
・プローブを左側にふることでP1/A1、右側にふることでA3/P3を描出できる
・逆流部位の確定診断

TG basal short axis

・カラードプラにより病変部の診断に有用
・左室壁運動の確認

僧房弁閉鎖不全

分類

  1. Carpentier分類
  2. 弁葉運動によって3型に分類

    1型: 弁葉運動が正常
    2型: 弁葉運動が過剰で、ジェットは病変がある弁葉から離れる方向にふく
    3型: 3a型(構造型)と3b型(機能型)に分けられ、ジェットは障害された弁葉に向かう方向にふく
    3b型: 左室拡大・乳頭筋の偏移によるtetheringによる。虚血性MR


  3. 弁葉の動き
  4.  billowing: 弁尖が左房内に突出するが、接合点は弁輪レベルより左室側
     prolapse: 弁尖が左房内に突出し、接合点も弁輪レベルより左房側
     flail: 腱索が断裂し、弁尖先端が左房内に翻る

僧房弁閉鎖不全を評価のポイント

(a) 重症度判定
(b) 病変の部位
(c) 逆流の機序と形成可能か

重症度評価

                           
    軽度中等症重症
    ジェット面積/左房面積< 20%> 40%
    縮流帯の幅(mm)< 33 ~ 7> 7
    EROA(有効逆流口面積)< 0.20> 0.40
    逆流量(ml)< 30> 60
    逆流率(%)< 30> 50
    肺静脈血流波形収縮期波減高収縮期逆流

  1. ジェット面積/左房面積
  2. プローブをふりながら左房全体をみておよそのジェット面積を評価する
    エコーの設定、左房圧に大きく影響をうけるため、単独で重症度を判断できない

  3. 縮流帯
  4. ジェット基部の幅のことで重症度と関連する
    7mm以上で高度僧房弁閉鎖不全と診断できる

  5. EROA(有効逆流口面積)
  6. [原理]
     逆流弁口が小さい場合、同心円状に半球の中心に向けて一定速度の血流が流れると仮定する

    カラードプラ法によるカラーの折り返し現象を用いることで、半球表面の血流速度(Va)を知ることができ、PISA半球上の単位時間当たりの面流量は、半球表面積(2πr2)と折り返し速度の積(Va)で表される

    PlSA半球上の血流量は逆流口を通過する血流量と等しいことから、PISAの半径と僧帽弁を逆流する血液の速度(Vp)を測定することで、有効逆流口面積(EROA)を算出できる

    EROA x Vp = 2πr2 x α/180 x Va

  7. 逆流量・逆流率(連続の式による)
  8. ジェット基部の幅のことで重症度と関連する
    7mm以上で高度僧房弁閉鎖不全と診断できる

  9. 肺静脈血流
  10. 肺静脈血流パルスドプラ波形を測定
    正常では収縮期・拡張期ともに左房に向かう順向性血流となるが、重症MRでは収縮期に左室から肺静脈への逆流により、肺静脈血流の収縮期成分の逆流が起こる

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