人工弁
人工弁の種類
機械弁(大部分が二葉弁)
機械弁は生体弁よりも耐久性に優れるが、血栓形成しやすいため術後に抗凝固療法が必要となる
超音波が通らないため、音響陰影、多重反射を生じる
[機械弁のエコー観察ポイント]
- ディスクの動き
- 弁がきちんと収まっているか
- 二葉弁の装着方向
- 正常な血流パターンの確認と異常弁口逆流・弁周囲逆流の除外
- 二葉弁の正常エコー所見
- ・ディスク開放時に弁口を通る順向性中心流
・ディスク閉鎖時に数条の小さな逆流ジェット(二葉弁ではヒンジ部から少量の逆流が起こるように設計)
・正常逆流はジェットが小さく、持続時間が短い
- 弁の圧較差と有効弁口面積の計算
断層像で2枚のディスクの開閉を確認
僧房弁位の人工弁評価にはME long axisが有用
大動脈弁位の人工弁はME long axisで音響陰影によりdropoutしてしまうため、TG long axisやdeep TG long axisで評価
弁周囲逆流、人工弁感染による脱落がないか確認
・antianatomical configuration 人工弁の弁尖の開閉方向がnarativeの弁尖と直行
・anatomical configuration 人工弁の弁尖の開閉方向がnarativeの弁尖と平行
二葉弁中央を通過する血流は加速されるため、ドプラ法と簡易ベルヌーイ式による圧較差では過大評価してしまうため、測定にはピーク血流速度比率や速度時間積分値比率を使用する
[大動脈弁位人工弁の重症狭窄]
左室流出路TVI / 人工弁通過ジェットTVI < 0.25
左室流出路ピーク血流速度 / 人工弁ジェット血流速度 < 0.35
[僧房弁位人工弁の重症狭窄]
人工弁通過ジェットTVI / 左室流出路TVI < 2.2
生体弁
ブタ・ウシ異種生体弁を布で覆った縫合輪(sewing ring)付きワイヤーフレーム(stent)にマウントして作られている
生体弁では弁中央から少量の逆流が残ることがある
人工弁機能不全
人工弁逆流
- 正常逆流
- 異常弁口逆流
- 弁周囲逆流
少量の逆流は機械弁の全例、生体弁の10%に認められる
弁葉石灰化、穿孔、亀裂、逸脱(rockingがみられる)、弁破壊などの変性によって生じる
縫合輪が十分に固定されていないときや縫合輪の脱落により生じる
人工弁輪の外側から起始し、心腔壁に沿って流れる偏心性逆流ジェットが特徴
人工心肺離脱直前に認められる少量の逆流はプロタミン投与により改善することがある
人工弁患者不適合
患者にとって過小の人工弁を植え込むことで血流障害が起きる
有効弁口面積指数 < 0.65のとき高度不適合と判断
有効弁口面積指数(cm2/m2) = 人工弁の有効弁口面積(cm2) / 体表面積(m2)
血栓とパンヌス
人工弁に付着した高輝度なパンヌスによって、人工弁の開閉が妨げられる
溶血
血流速度の高いジェット血流と人工物の衝突による
心内膜炎
人工弁植え込み後3 ~ 6%に発症し、死亡率は20 ~ 80%に達する
疣贅、人工弁脱落、弁輪部膿瘍によって診断